トヨナカサマセミ所感
・トヨナカサマセミ所感
※当日来てくれた人向けのお話です。
先日、トヨナカサマセミというイベントに出てきた。
「先生ごっこ」をするという事で登壇者はフリーのテーマで
45分喋っていいというイベント。
話が来たのは2,3カ月前で、デザインをあれこれやってくれてる太田さんから声がかかった。
「尼崎のサマセミみたいなの豊中でもやるんですけど、ちべさんやってもらえません?」
特に断る理由もなかったので、「いいっすよ」
と返事した。
コロナ禍にお店オープンしたりしたので、起業の話とかコロナ禍を生き延びた苦労話とかカレーの話とかいろいろ考えたのだけれど、
どうも旅の話を所望されているようだったので『一人旅のススメ』というタイトルにした。
返事をしたはいいけれど、夏休みの宿題のように内容に関してはズルズルと先送りにしていると、先にパンフレットが出来ていた。
自分の話の説明欄には
『世界を一人で旅したら今の仕事に繋がったというカレー屋店主の体験談。やりたい事がなくても大丈夫!とにかく旅にでよう』
という、簡潔で良く出来た説明文が載っていたので、
「これに沿って、お話を作ればいいのだな」と構成を組み始めた。
こんな話。
とりあえず、パワーポイントを開いて
最初考えたのは起承転結の基本的な4部構成。
一人旅の説明から始まって最終的には「旅っていいよね」という結論に結ぶ。
『起』の問題提起の部分から、過去やってきた旅のトピックを作り、
それぞれの旅でのエピソードを各3つ、そこから導き出すそれぞれの旅の結論、『転』の所で旅からカレー屋になるきっかけの話でひっくり返して結論に結ぶ。
おー完璧ではないか。意外と簡単にできたぞ。
パワーポイントの資料はあくまでメモ代わり、つまづいた時のガイドくらいの簡素なものにした。
今回はいかに自分の話に引きつけれるかが勝負になると思ったので、あまり手の込んだ資料を作ってしまうと聞いている人が話よりもスライドに集中してしまうのは望ましくない。結局話を作る時間よりも昔の写真や日記を引っ張り出してくる方が時間かかった。
完成するとさっそくリハーサルをやってみる。
長くなりそうだなーと思いながら通しで喋ってみると1時間半。
・・・こんな長い話誰が聞くねん。
与えられた時間は45分だったので、倍の時間がかかってしまっていた。
とりあえず、旅のエピソードを各1個に減らしていき、全体のバランスが崩れないようにエピソードを入れ替えたり、端折れる所はバッサリ切った。
それでもどうしても50分を切れない。これ以上切ると全体の構成が崩れてしまうので、3日前に断腸の想いで
起承転結の4部構成から序破急の3部構成に全体を作り直した。
展開の面白さはなくなったが、話にスピード感がついて、前日に何とか45分に合わせ込む事に成功。
結局、この週は、営業が終わって翌日の仕込み、
家に帰ってから毎日時間を計ってスライドのフレーズやタイミングの微調整をしたので毎晩寝るのは夜中3時になってしまった。
当日もリハーサルを自宅でやった。
どうしても42分を切る事が出来ないので、授業が始まったらノンストップでいかないと間に合わない。
始まる30分前に控室に入り、他のセンセイの方々と軽い挨拶をする。少し緊張しているようだったけどいい緊張感のようにも見えた。自分はというと、緊張も確かにあったのだけれどそれよりも、毎日行うリハに疲れて
緊張よりも早く解放されたいという一心で(早く喋らせてくれー)という気持ちの方が強かった。
人前で話すのは10年ぶりなので、ちょっとでも緊張せずに済むように前日教室の下見や機材の確認をしたかったのだけれど、
残念ながら中に入れずに教室を見たのはこの時が初めて。教室に入るとサイズ感もほどほどで、何かいけそうな気がしてほっとした。
スピーカーの立つ位置でも聞き手の印象が変わる。
例えば資料の説明やデータに注目して欲しい時はスクリーンの下だったり、スピーカーが悪目立ちしそうな時はパソコンを見ながら座って喋ったりする。今回は自分の旅の話で、引っ張っていかないといけなかったので、教室の中央で話すことにした。
準備を始めるとトラブルが起こった。
自前のパソコンがプロジェクターの端子と合わない。
(まぁ、そーなるわな)
と思いながらとりあえず、USBを借りてパワーポイントのデータを別のパソコンに移す。
既に時間が押していた。
自前のポインターも持ってきたのでそれも新しく来たパソコンに差し込んだのだが、ちゃんとインストールの確認しなかったのが良くなかった。
話し始めると、スライドが勝手に切りかわってしまう。どうやらポインターが誤作動を起こしているようだ。
せっかくワードを出したり話す事のリズムも作ってきたのに台無し。
(かなんなー)と思いながら、動揺する訳にもいかなかったので、与えられた環境でベストを尽くそうと話を続けていると、更に追い打ちをかけるようにプロジェクターの画面が動かなくなった。
パソコンの再起動をかける。これで時間内に話を終わらせる事が不可能になった事が確定した。そうなると急いで全部話す必要も無くなったので話すスピードを落とした。
再起動にも時間がかかったので、パソコンなしで話をつづけた。時間内にどう着地させようかなーと考えながらも、聞いている人がなるべくプロジェクターの方に目がいかないように手を叩いて音を鳴らしたりゼスチャーを駆使したりして視線をこっちに引きつけるようにした。
結果、前日までに作った構成は後半崩れしまってぐちゃぐちゃ。自分的には65点くらいの出来だったのだけれど、後で聞いてくれた人の感想を聞くとそんなに反応は悪くなかった。
むしろ、パソコンが動かなくなった途中から資料なしで落ち着いて話して見えたのか、ゼスチャーがエモーショナルに見えたのか
迫力があったように映ったようだった。
とりあえず無事に終わって良かった。
資料を作りながらその時の旅の説明をしていたのだけれど、当時は何で旅しているのか自分でもよくわからなかった。
これまで過去の旅をちゃんと顧みる事もなかったので
長い時間が経って、ようやく「あれは一体何だったのか?」という事を言語化できた気がする。
言語化できて旅が終わったという気もするし、ちょっと寂しくもあるがきっとそういうものなのだろう。
この一週間はたいそうしんどかったのだけれど、この機会を貰えた事に感謝だ。
ただ、自分的には不完全燃焼でお粗末な出来だったので、今回のプレゼン資料はどっかで使い回してちゃんと成仏させてやらねばと思った。