スリランカ滞在記2

 旅するカレー屋

二日目は街中をとにかく歩いた。
基本的に新しい街に来ると宿まで迷子にならない程度に近所を歩き回る。
宿から街中までは歩いて20分、1㎞程度の道。

 昨日乗せてもらったタクシー運転手のスワンさんの話では、2年前に
経済が破綻して、一時期はガソリンを買うのに3日もかかったそうなのだけれど、
ほんの2年前にそんな事があったとは思えないほどに活気があり、中心地が近づくにつれ現れるビルや
ホテルはどれも新しかった。


 ひとまずは中心地まで歩く。ほんの20分歩いている間に2組ほどスリランカ人に声をかけられた。
 天気は良く、左手にはビーチが見えて気分がよく正直一人で歩いている方がよかったのだけれど、
無碍に断るのも悪いと思い、キリのいいところで向かう方向が違うと別れた。
 スワンさん曰く、スリランカの人は親日の人が多いらしく、仲良くなったら面白い事が起こるかも
しれなかったが、昔旅してた時みたいな勘が全く働かなかったのでスルーした。
  どうにも距離の詰め方が少し嫌なものを感じた。長く旅していた頃は昔は相手の挙動で「ここまでは安全、
このラインを越えたら逃げる」みたいな線引きがしっかりわかったものだけれど、全くわからなかったので避けた。

 とりあえず昨日コンダクターの方に教えてもらった両替所に行くことにした。
10000円が18500ルピーになった。レートは100円→190ルピーなので手数料は約250円。だいたい物価は日本の半分くらいか。
 東南アジア旅行している時はあんまり意識した事なかったが、行き交う人が多い。
 以前は「活気がある」という事で済ませていたが、お店やるようになってからなのか日中働いている
 若い人がとにかく多く、オフィス街でスーツを着たサラリーマン風の人はもちろん、肉体労働してそうな人や
 タクシーの運転手もみんな若かった。

  こんな所で商売したら何置いてても買ってに売れてくやん。

 よく経済を血の循環に例えたりするけれど、そういった意味では活発に循環していた。
 お店に来る年配の方が「昔の市場はすごかった」とか「商店街人が多くて進まなかった」みたいな話を聞くが
 きっとこんな感じだったんだろうなと思う。

 
 とりあえずは市場へむかった。
 ほかの東南アジアのマーケット同様観光客を相手に値段吹っかけてきたり、何とか呼び止めようとする人はいる。
 何度か声をかけてくるのだけれど、無視したり「No Thank you」としっかりめに断ると、割と物分かりよく引き下がる人が多かった。
 インドでその洗礼を結構しっかりめに受けていたので、せっかく海外に新興国に来たのに少々物足りなくて、

  (物売りつけたいんやったらもっとグイグイ来いよ!)

 と何かよくわからない不満が沸いた。


 欲しかったのはスリッパと南京錠。基本的に海外に出るときのパッキングはあんまり時間がかからない。
 一か月半とか半年とか長期の旅行の時ですら荷物をまとめるのに2時間くらいで終わってしまう。
 今回みたいに日本より物価の安い国だったら現地で買ってしまえばいいので、必要なものといえば案外コンセントの変換機だったり、
 最近ならモバイルバッテリーだったり、現地で調達するのが大変なものだけ抑えておけば案外何とかなる。
 特にスリッパみたいな消耗品は嵩張る。南京錠はゲストハウスのロッカーが自分で鍵をつけるタイプの簡易なものだったので、きっと市場に売っているだろうと
 思ってきたのだ。
  案の定南京錠はスーツケースやバックパックなど、旅行用品の売っている屋台にあり、スリッパは日本なら3000円~4000円くらいしそうなものが
 2000ルピー(1000円)で買えた。
 
 久しぶりに来る海外、特にアジア圏だったのでとのかく楽しく、初めてインドや東南アジア行った時のように少し熱にうなされたような感じだった。
 気になったものがあれば話しかけ、足の向く方向に歩いた。
  今回は特にカレーやスパイスといった探求するテーマがはっきりしていたのがよかったのか、途中気になる食材が売ってたり
 食堂や軽食屋さんに入ったら食べ物の名前とか味とかを吟味するのは面白かった。

  気が付けばこの日歩いた歩数が35000歩になっていた。
 あぁ、細胞レベルで体中が喜んでいるような感覚があり、こういう体験がしたった気がする。
 常日頃から極力柔軟な思考をせねばと意識してはいるものの起きる時間やお店に行く時間、毎日カレーを作り、それがルーティン作業になってくると、どうしても思考のパターンが固定されて離れられなくなる。
  街中を歩いて視界に入ってくるいろんなものが刺激的で道行く仏頂面のサラリーマンだったり、地べたに座り込んでいるお爺さんだったり見ながら
 「この人何考えてるだろう?」とか「何してんねやろ?」

  と妄想するだけで楽しいし、日常では考えない事を想像して普段思いつかない思考パターンが作られてくる。割と日々の生活を営んでいると、気づかないうちに誰かの価値観の影響受けたり、自分の価値観とはそぐわないものの為に頑張ったりする。比較的自分は受けづらい方だとは思うのだけれど、真面目に社会人やってる人は大変な事に違いない。

 こうして海外で何しているのかよくわからない人らを見ていると、「あぁ、本当に全ての行いには意味ないんだなぁ」と感じるのである。きっとこの何しているかよーわからんおじさんが日本に来て頑張って働いている人見ても必死こいて玉ねぎ炒めてカレーを作っている自分を見た所で同じ事を思うと、ハッとする。

 「この人なんでこんな頑張ってんねやろ?」

 全ての行いは意味ないと言うと聞こえは悪いけれど、何か肩の力が抜けるのだ。

時々こうやって頭の中がリセットされている自分に気づいたりする瞬間があるので


  「あぁ~、やっぱり旅好きだなぁ~」

 としみじみ思うのだ。

 

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