しまちゃんのカレー
夏からウチで新たにお手伝いさんに来てくれている人がいる。
名前はしまちゃんという。
てっきり『志麻』って名前だと思っていたのだけれど、
本名が『島津』だからしまちゃんだったという事をけっこう最近知った。
しまちゃんはカレー卸したりイベントとかで何かとお世話になっているガサキベースのお客さんだった。
仕事帰りに何度かウチに寄ってきてくれてるのだけれど、現在は転職活動中だ。
なぜお手伝いさんかというと「次の仕事が決まるまで」と、いう条件で急に来れなく
なる可能性があるのでバイト代はいらないという事でそうなった。
実際働いてもらうと仕事がとにかく楽になった。
朝来てから掃除をしてもらったり、玉ねぎのスライスだったり、買い物を忘れたりしたら買いに行ってもらったりする。
実際これまで全部自分一人でやっていた事なので一人でも出来るだけれど、買い物して戻って来る10分間が非常にありがたい。基本的にカレーにしか興味がないので、自分には気が付かない細かな所にも気がつくので非常に助かっている。
さすがにタダ働きは申し訳ないので、バイト代払わせてと申し出たのだけれど拒否されるので、
「ほんじゃあカレーの作り方でも教えようか?」
という事でスパイスカレーの作り方を教える事にした。
これまで何人かにレシピを教えた事はあるのだけれど、実際再現するのは難しいそうだ。
どうしてもトマト煮込みみたいになってしまう。
それはそうだろうと思う。
あんまりレシピ自体は重要でないので、作り方のポイントみたいなものは口で説明しても
わからないのだ。
しまちゃんにはスパイスカレーの材料からスパイスの量を事細かに説明した上で実際自分の仕込みを見せては「玉ねぎこれくらいの色になったら次はトマト入れるねん」と工程の一つ一つで手を止めて見せて説明したた上で休憩時間に実際に作ってもらう事にした。
伝えた事はしっかりメモしていたので、特に口挟む事なく作ってもらった。
見た目は自分の作ったカレーと遜色なく、おースゴイじゃんと思いながら食べてみた。
「おや?何か足りない」
食べた後の『伸び』とでもいうのか、何物足りない気がする。それは食べれば食べる程顕著に感じるのだった。
初めて自分が作ったインド式のチキンカレーなんて本当にトマト煮込みでしかなかったので、それに比べれば
全然美味しいのだけれど、何か足りない。例えばこれが友達の家遊びに行った時に出てきたら「おー、本場っぽくて美味しい」
とテンション上がる事だろう。
だけどお店としてこれを出して「これ食べてもう一回食べたいか?」と問われると結構疑問が残る。
「この違いは何だ?」
レシピは同じだし、何より自分と同じカレーを作ってもらう為に説明もしている。
まぁ4年以上毎日同じカレーを作り続けているので、1日2日で自分と同じもの作られても立場なかったりするので、当たり前と言えば
当たり前ではある。
もう少し解像度を上げて分析してみると、主にカレーの作り方は
①スパイスを油でいためる
②にんにく、しょうがを入れて炒める
③玉ねぎを炒める
④トマトを入れて水分を飛ばす
⑤鶏肉を入れて煮込む
といった手順になる。
誰かに説明する時は「だいたい」としかいいようがないのだけれど、自分の行動を分析していみると
どうやら各工程で色はもちろん、火加減、匂いや音で次の工程に移るタイミングを計っているようだった。
逆説的に考えるとこの違いをもっとロジカルに説明できるようになったら、そこから自分のカレーももっと美味しくなるのではなかろうか。
ひょんなきっかけでカレー作りを教えているのだけれど、自分の方がいろいろ教わっていて学ぶことが多い今日この頃だ。